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あげるために生活から職業まで基本的に面倒をみる、これは行政の役割です。ボランティア団体に全部おんぶしてしまうのは行政の無責任ということになりますし、そこに行政とボランティアの役割分担があります。行政には行政の論理がありまして、例えば瓦が全部落ちたものですからブルーシートをかける作業があります。こういう作業はボランティアがかなり行ったと報告されていますが、もしこれを行政が行う場合、行政は全部公平にやるわけです。この公平、一定がなかなか難しく、一定の所得以下の人の場合にはやりますが、一定の所得以上の人にはやりません、ということになります。しかし、ある程度公平に永続的にやるということについては、やはり行政の責任であると思います。
このようにボランティアと行政とは非常に違うものです。行政の公平性、継続性という論理とボランティア活動の自発性、善意、愛、調和というものをいかにミックスしていくかというのが、これからのボランティア社会を作っていく場合に必要な役割分担だろうと思います。なかなか難しい問題です。
実際にボランティア活動をやっておりますと、あまりいいことばかりがあるわけではありません。どの程度個人のプライバシーの中に入っていけるかという問題もあります。阪神・淡路大震災では、今まで普通の生活を営んでいた人が突然の大災害にみまわれました。被災者たちの人間としての尊厳を傷つけない範囲内でどこまでボランティアでその人たちの生活再建に関わっていけるか、ということは非常に難しいものがあります。
また、在宅介護をしている場合は、家族とのコミュニケーションを超えて、ボランティアが関わっていくことの難しさがあります。またボランティアに対して「ボランティアで来たんだから何でもやってもらおうじゃないか」と開きなおられたり、ある学生は「あなた方はこのボランティア活動をやったら単位にカウントされるんでしょ」などと言われてちょっと頭にきたと話してくれました。
ボランティアを受ける側の意識もさまざまですが、ボランティアをする側もされる側も本当に相手を尊敬し、お互いに調和をしながら、これからの日本のボランティア社会を作っていかなければいけないのではないかと思います。
前途は大変な課題が山積みです。行政の組織そのものにも制度疲労があり、新しい社会に対応できない部分も出て来ています。また新しいボランティア社会を作っていこうとする場合にもいろいろな問題があります。しかしそれを乗り越えて、先程アナ・ミヤレスさんがおっしゃいましたように、まったくの寝たきりの方でも残存機能を活用して自分ができること、それは人の前に座ることだけか、話を聞いてあげることだけかもしれませんが、そういうギブアンドテイクというのがタイムダラーの思想だと思うのですが、そのいい意味でのギブアンドテイクを愛と調和で行うボランティア社会を築いていかなければならないと思います。どうもありがとうございました。

 

 

 

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